「哲学」というと「難しそう」、とか「なんか怪しい」と言う印象を受ける人が多いと思うが、そもそも哲学とは何なのであろうか。
哲学はそのネーミングから学問だと思われがちなのだが、私は哲学のことを「物事の本質を考える活動」だと思っている。IT業界では、「なぜなぜ分析」と言う手法を用いて今起きている問題の根本原因を探ることがあるが、理由は「なぜ?」と3回以上聞くと物事の本質が見えるためである。この考え方は非常に哲学に近いと思う。
例えば、プログラマーの1人がコーディングミスをしたとする。
なぜコーディングミスをしたのか?→設計書をよく読んでいなかったため
なぜ設計書をよく読まなかったのか?→睡眠不足で集中力がきれていた
なぜ睡眠不足に陥っていたのか→連日残業続きだったため
なぜ残業が多かったのか→マネージャーの管理が行き届いていないため
こうすると一見プログラマーのうっかりミスと思われた問題が、実はマネジメントに課題があるのではないかという現状を浮かび上がらせることになる。世の中の哲学的な考え方のほとんどは、このような掘り下げの結果であると思っている。
私は哲学者ではないのであくまで個人の所感だが、哲学においても何か物事を考える時にはこういう考え方をする。「物事の善悪とは」という命題に対して、誰かが「正しい行いをすることが善」と答えた際に「そもそも『正しい』とは何か」と考えるのが哲学の思考法だ。そして、何をもって正しいとするかについて、様々な考え方がある。
「哲学の基礎」という本に書いてあったのは、誰かが全家庭の水道水に少しずつMDMAを混ぜていた場合、その人は罰せられるべきか、という命題があった。普通に考えれば罰するのが当然だが、もし住民が中毒になったわけでもなければ、ただ知らず知らずのうちに少しずつ気持ち良くなっていただけで、誰も損をしていないのである。
これを果たして本当に悪いと言えるか、を考えることが哲学のキモだ。
私は正直、誰にも損害が出ていないのだから問題ないじゃないかと思うが、哲学の考え方の中には、「彼が悪いと思ってやっているのかどうか」で判断する考え方もある。
いや、そんなん言ったら何でもありやん、と思ったあなたは鋭い。何でもありなのが哲学の面白さなのだ。