カメルーンの数少ないリゾート地の1つに、「バナ」がある。
カメルーンの西部州の州都、バフッサムから車で南に1時間ほど走ったところにあるこのリゾートホテルは、何の特徴もない村の中に突如現れる。
宿泊者はプールや釣り堀、テニス、トレーニングジムなどの施設を無料で使うことができる。有料のサウナやマッサージもあり、周辺に何の見どころもないがゆったりとくつろぐことができるので、長期休暇の期間は国内外から癒しを求めて多くの人がやってくる。
2017年1月、私は休暇を利用し、同期のマルちゃんを含む6名でここを訪れていた。
我々が1番熱中したのは釣り堀だ。というのも、どんなに辛抱強く糸を垂らしても全然釣れないのである。しかし、つついている感覚は手に感じるし、エサもしっかり持って行かれる。
エサが食べられるので魚自体は存在しているはずだ、と何度もチャレンジするが、それでも釣れない。最早、ダイバーのバイトが水中でエサを取って食べているのではないかと疑ってしまうほど釣れない。結局、1人を除いて誰も魚を釣ることができなかった。
しかし、我々は魚を釣りに来たのではなく、ただ単にゆっくりできればよかったので、その結果に満足していた。その方が話のネタになるし、と納得した。
この旅の途中、私にとって嬉しいニュースも飛び込んできた。
ウィルス性胃腸炎を解熱鎮痛剤でごまかしながら受験したDELFのB2に、なんと合格していた。半年前の受験以来、特に何の対策もしないままに臨んだが、前回よりも10点以上点数が伸びていた。課題だったリスニングが10点伸びていたのが合計点の底上げに繋がった。
何もしなくても、住んでいるだけで何故かフランス語のスコアが伸びる。いい国だ。
自らの送別会を企画し、幹事を務めたのは後にも先にも我々だけであろう。
送別される側が自ら企画したとあればどんなしょうもないことをやっても許されるのではないか、というまさにしょうもない動機からである。
今回は帰国タイミングが多々被っており、JICA事務所の所長や、ボランティア調整員なども送別される側として名を連ねた。
我々が企画した送別会のメニューは、
- ギター経験者全員によるスピッツ「チェリー」弾き語り
- 帰国メンバー備品棚卸ビンゴ大会
- 帰国するメンバーの好きな曲を演奏してくれる会
- 目薬を使用しての号泣写真撮影会
の4つだった。
ビンゴ大会は私が出品した「ユニクロの全く同じTシャツ(濃いグレーのVネック)10枚セット」が誰に渡るのか、という点を中心に割と盛り上がり、帰国メンバーの好きな曲を演奏してくれる会も、サプライズ演出もあり感動的な仕上がりとなった。
一方、チェリー弾き語りと号泣写真撮影会は、メンバーの練習不足や目薬が写真にはほとんど写らないというアクシデントもあり、かなりスベった。
にもかかわらず、送別される側が企画したとあって頑張って盛り上げようとしてくれるみんなの優しさが心に刺さった。
そんな送別会から3日後、我々は延長期間も含め2年半の任期を終え、カメルーンの空港を飛び立った。
「日本に帰るという実感が湧かなすぎる」という私と、同期のマルちゃんの「実感しか湧かない」という主張は平行線を辿ったまま、我々は成田空港へと降り立った。協力隊の任期は成田空港に降り立つまでである。この瞬間にマルちゃんと私は晴れて「協力隊OB」となった。
2017年~延長戦~
完